「フィリピンからとび職人を特定技能で受け入れたい」——そう考えて調べ始めると、最初につまずくのがここです。特定技能に「とび」という業務区分は存在しません。
だからといって、とびの仕事で受け入れられないわけではありません。とびは、建設分野の業務区分のうち「土木」と「建築」の両方に含まれています。つまり、どちらかを選んで申請することになります。 この記事は、建設会社の人事・総務担当者と、登録支援機関の新任の職員に向けて、とびの仕事でフィリピン人材を受け入れるとき、どの区分を選び、どうやって技能水準を満たすのかを整理したものです。 なお、建設分野に共通する受入れ要件(建設業許可、月給制、建設キャリアアップシステム、JACへの加入、受入計画の認定など)は特定技能(建設分野)で受け入れるにはで扱っています。この記事は「とび」に絞って解説します。先に、結論だけ
① 「とび」という業務区分はありません。土木区分か建築区分のどちらかで申請します。 ② とびは、土木・建築の両方に列挙されています。どちらでも受け入れられます。 ③ 技能実習2号「とび(とび作業)」を良好に修了していれば、土木・建築のどちらにも試験免除で移行できます。 ④ 区分は「足場を組むかどうか」ではなく、実際に従事する工事で決まります。 ⑤ フィリピン側のMWO申請では、日本側の区分と求人票の職種表記を揃える必要があります。1. なぜ「とび」で検索しても出てこないのか
2022年8月30日の閣議決定により、建設分野の業務区分は19区分から3区分に統合されました。 国土交通省は、地方を中心とする多能工の人手不足に応え、すべての建設業に係る業務で受入れが可能となるよう、働く現場の特性に応じた共通の技能の存在という観点から精査を行い、「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分への統合を行ったと説明しています。 この再編で、それまで独立していた「とび」の区分は土木と建築に吸収されました。2. 土木と建築、どちらで申請するか
両方に入っているということは、どちらかを選ぶ必要があるということです。ここが実務上の最初の判断になります。 判断の基準は、足場を組むかどうかではありません。その人が実際に従事する工事が、土木施設のものか、建築物のものかで決まります。| 区分 | 従事する工事 |
|---|---|
| 土木 | 土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等 |
| 建築 | 建築物の新築、増築、改築若しくは移転又は修繕若しくは模様替に係る作業等 |
3. 技能水準をどう満たすか|3つのルート
とびで受け入れる場合、技能水準を満たす方法は3つあります。技能実習からの移行が、なぜ有利なのか
とびの技能実習2号を良好に修了している人は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。日本語試験の免除については、修了した技能実習の職種・作業の種類を問いません。 しかも、土木・建築のどちらの区分にも移行できます。受入れ企業の工事内容に合わせて選べるということです。 日本国内で技能実習を修了したフィリピン人を採用する場合の手続きは、日本にいるフィリピン人を採用するときもMWO手続きは必要?で扱っています。4. 特定技能2号への道
建設分野には特定技能2号があります。2号になると在留期間の更新回数に制限がなくなり、要件を満たせば家族の帯同も可能になります。長く働いてもらう前提なら、ここまで見ておく価値があります。 とびの場合、2号の要件は次の2つです。特定技能2号(土木/建築)の要件
① 試験に合格する 建設分野特定技能2号評価試験(土木)または(建築)、あるいは技能検定1級(とび) ② 班長としての実務経験 建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての経験とびに必要な実務経験の日数
実務経験は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価基準に基づいて判定されます。能力評価基準があるとびについては、レベル3相当の「就業日数(職長+班長)」が必要です。 国土交通省が公表している一覧によれば、能力評価基準「とび」に対応する必要就業日数は2年(430日)以上です。また、CCUSの職種分類で「足場とび工」に該当する場合、能力評価基準「解体」では2年(430日)以上とされています。 【要確認:CCUSの職種コードと能力評価基準の対応は複数あり得ます。実際の判定にあたっては、国土交通省が公表する最新の一覧で、本人の職種コードに対応する基準をご確認ください】 参考までに、同じ建設分野でも職種によって差があります。建築大工は0.5年(108日)、鉄筋工・内装工は3年(645日)です。とびは中間にあたります。2号を目指すなら、入国した時点からCCUSに就業履歴を積み上げておく必要があります。後からまとめて証明するのは容易ではありません。
5. フィリピン側で気をつけること
ここからが、フィリピン特有の論点です。 MWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)への申請では、求人情報(Job Order)に職種を登録します。このとき、日本側で申請する業務区分と、求人票に書く職種が食い違わないようにしてください。 日本側で「建築区分」として在留資格を申請しているのに、フィリピン側の求人票では土木工事を想起させる職種名で登録されている——こうしたずれは、後から整合を求められる原因になります。 職種名の英語表記は、書類全体で統一してください。雇用条件書、求人票、募集取決めで表記が揺れると、補正の対象になります。英訳のルールはMWO申請の英訳ルールで扱っています。 また、フィリピン側の手続きは日本側の在留資格申請より前に進める必要があります。順序については手続きの順序|日本側とフィリピン側をご覧ください。よくある間違い
- 「とび」という業務区分で申請しようとする。2022年8月の再編で、とびは土木区分と建築区分に統合されました。単独の区分は存在しません。
- 足場を組む仕事だから土木だ、と決めつける。区分は作業の種類ではなく、従事する工事が土木施設か建築物かで決まります。
- とびの技能実習を修了した人は、とびの区分にしか移行できないと考える。土木・建築のどちらにも試験免除で移行できます。
- 技能実習修了者にも日本語試験が必要だと考える。技能実習2号を良好に修了した者は、職種・作業を問わず日本語試験が免除されます。
- 旧「とび」の評価試験に合格した人が、あらためて試験を受けると考える。経過措置により、旧試験の合格者は土木・建築の試験に合格したものとみなされます。
- 2号の実務経験を、後からまとめて証明しようとする。CCUSに就業日数が蓄積されていない場合、経歴証明書での確認になります。日々の積み上げが前提です。
- 日本側の区分とフィリピン側の求人票の職種がずれている。MWO申請では表記の整合が問われます。
まとめ
確認すること
- 「とび」の区分はありません。土木か建築を選びます
- 選ぶ基準は、従事する工事が土木施設か建築物か
- 技能水準は、試験合格/技能実習2号「とび」の修了/技能検定3級(とび)の3ルート
- 技能実習「とび」修了者は、土木・建築のどちらにも試験免除で移行可能
- 2号は技能検定1級(とび)等+班長としての実務経験。とびは2年(430日)以上
- フィリピン側では、日本側の区分と求人票の職種表記を揃える
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本記事は情報提供を目的としたものです。制度・運用は変更されることがあります。具体的な手続きにあたっては、国土交通省・出入国在留管理庁および建設技能人材機構(JAC)の最新情報をご確認ください。
主な参照先:国土交通省「特定技能制度(建設分野)」/同「建設分野の特定技能に係る業務区分の再編について」/建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用要領(ガイドライン)別表6-1/国土交通省「建設分野の2号特定技能外国人に求める『班長としての実務経験』について」(令和7年1月31日一部改正)

