フィリピン人従業員が退職・帰国するときの手続き|特定技能の入管届出とフィリピン側の精算を実務順に整理

特定技能
特定技能|退職・帰国・雇用終了

フィリピン人の特定技能外国人が退職・帰国することになったとき、「日本人従業員の退職と同じ流れでいいのか」「出入国在留管理庁には何を出すのか」「そもそもフィリピン側で何かする必要はあるのか」「帰国の航空券は誰が払うのか」——受入れ企業の人事・総務のご担当者や、登録支援機関の実務担当者から、こうした問い合わせが繰り返し寄せられます。

日本人の退職であれば、手続きは社会保険・雇用保険の資格喪失が中心です。しかしフィリピン人特定技能者の場合は、日本の在留資格制度とフィリピンの海外就労制度という二つの制度が同時に動きます。片方だけを見て進めると、あとから「届出漏れ」「契約違反」「費用トラブル」が表面化しがちです。

この記事では、退職・帰国が決まってから完了までにやることを、日本側フィリピン側に分け、実務の順序で整理します。

結論:日本側は「届出」、フィリピン側は「分岐と費用精算」

  • 日本側:特定技能雇用契約の終了から14日以内に、受入れ機関と本人の双方が出入国在留管理庁へ届出。2025年4月に届出ルールが改正されており、古い情報のままだと出す書類を取り違えます。
  • フィリピン側:本人が「完全に帰国する」のか「日本国内で転職して在留を続ける」のかで分岐。帰国(送還)費用の負担は、日本側の運用要領とフィリピンの雇用契約とで前提が異なります。
  • 加えて、送出機関(PRA)への連絡と送出管理費の停止・精算も見落とされやすい論点です。

退職は”日本側で終わり”ではありません。フィリピン側の精算まで見て、はじめて一区切りです。

※ 雇用が継続したままの一時帰国は、本記事とは扱いが異なります。休暇としての帰国の申し出をどう扱うかについては、繁忙期に一時帰国を申し出られたらをご確認ください。

手順1:退職日を固める(ANNEX-Bの終了条項)

フィリピン様式の雇用条件書(ANNEX-B/POLO-SSW様式)には、雇用関係の終了に関する条項があります。従業員は原則として少なくとも1か月前の書面通知で退職できるとされ、正当な理由(重大な侮辱・非人道的な待遇など)がある場合は通知なしで終了できるとされています。雇用主側からの解雇も、重大な不正行為・業務命令への故意の不服従・重大かつ常習的な怠慢・詐欺などの正当な理由が必要です。

実務では、まず退職日(契約終了日)を確定し、これを起点に「14日以内」などの各期限を逆算します。フィリピン雇用契約の詳細は、姉妹記事である雇用契約書(ANNEX-B)の書き方で解説しています。

手順2:日本側の届出(ここが最重要)

契約終了に伴い、受入れ機関(特定技能所属機関)は「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-1-2号)」を、終了日から14日以内に、指定書記載の住所を管轄する地方出入国在留管理局へ提出します。出入国在留管理庁の電子届出システムを利用したオンライン提出も可能です。

本人も、退職日から14日以内に「所属機関に関する届出(参考様式1-4/契約の終了)」を提出する義務があります(入管法第19条の16)。怠ると20万円以下の罰金の対象となり得るほか、その後の在留資格変更・更新申請で不利に扱われかねません。企業側は退職時に、本人へこの届出の存在と提出方法(オンライン・郵送・窓口)を案内しておくと安心です。

2025年4月改正で変わった点要確認

  • 定期報告が四半期に1回 → 年1回に変更されました。
  • 随時届出が整理され、自己都合退職のみの場合は「受入れ困難に係る届出」の提出が不要に。一方で「受入れ困難届」の対象拡大や「基準不適合届」の新設など、企業側に厳しくなった部分もあります。
  • 「昇給のみ」は届出不要とされるなど、細かな線引きも見直されています。

古い記事の情報で処理すると、出すべき書類・出さなくてよい書類を取り違える危険があります。届出の種類は、必ず最新の運用要領・入管庁ホームページで確認してください。なお、ハローワークへの外国人雇用状況届出(離職)は在留資格を問わず必要で、日本人と同様の労働・社会保険手続きも別途発生します。

手順3:「帰国」か「転職(在留継続)」かで分岐

特定技能外国人は、雇用契約が終了しても、直ちに帰国が義務づけられるわけではありません。転職により新たな受入れ機関と特定技能雇用契約を締結し、在留資格変更許可を受ければ、在留期間の範囲内で引き続き在留できます。

  • 受入れ側の都合で契約を解除する場合:転職支援が義務的支援に含まれます。転職先を探す手伝い、推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与、必要な行政手続の情報提供などが求められます。
  • 完全に帰国する場合:出国時の空港送迎は義務的支援の対象です(※一時帰国は対象外)。そのうえで、次の費用の論点に進みます。

正当な理由なく3か月以上、特定技能に係る在留活動を行っていないと、在留資格取消しの対象になり得ます。転職の場合は、在留の空白期間を作らないことも実務上の要点です。

手順4:帰国(送還)費用は誰が負担するか——二国の前提の違い

ここが最も誤解されるポイントです。日本側とフィリピン側で、費用負担の「原則」が逆になっていることに注意してください。

項目日本側(特定技能運用要領)フィリピン側(ANNEX-B/POLO-SSW様式)
帰国(送還)費用の原則原則 雇用主(principal)および認可送出機関の責任
本人が費用を用意できない場合もともと雇用主・送出機関の主要な責任に含まれる
本人から回収できるか雇用終了が労働者の過失のみによると労働仲裁人が認定した場合に限る
病気を理由とする解雇雇用主が送還費用を負担
付随費用(入管の罰金等)送還費用に含めて雇用主側の負担とされる

つまり、フィリピン様式の雇用契約を締結している以上、日本側の「原則本人負担」だけで判断すると、契約上の義務(原則、雇用主負担)と食い違う恐れがあります。実務では、自社が実際に締結したANNEX-Bの送還条項を確認したうえで、負担を決めるのが安全です。要確認個別契約の文言・二国間の運用。

手順5:送出機関(PRA)への連絡と精算

送出機関との募集契約は、労働者本人ではなく企業(受入れ機関)との間で結ばれています。契約終了時には、次を確認します。

  • 送出機関へ、退職・帰国の事実を連絡する。
  • 毎月発生していた送出管理費を停止する(起算日と停止日を明確にする)。
  • 早期離職時の初期費用の返金ルールを確認する。募集契約書によっては「入国後1か月以内の離職は初期費用の全額返金、2か月以内は50%、3か月以内は25%、3か月超は返金なし」といった定めが置かれていることがあります(※金額・条件は契約書ごとに異なるため、必ず自社の条項を確認してください)。

送出機関への連絡と管理費の停止を忘れると、費用が発生し続けたり、受け取れるはずの返金を取り損ねたりします。

よくある間違い

  1. 日本人と同じ手続きで済むと考え、特定技能固有の随時届出を漏らす(罰則・将来の受入停止リスク)。
  2. 本人の届出(参考様式1-4)を案内し忘れる。本人にも14日以内の届出義務があります。
  3. 帰国費用を一律に本人負担としてしまい、ANNEX-Bの送還条項と矛盾する。
  4. 2025年4月改正前の古い知識で、出す書類・出さない書類を取り違える。
  5. 送出機関への連絡・管理費停止を忘れ、費用が発生し続ける/返金を取り損ねる。
  6. 企業都合の契約解除であるのに、転職支援(義務的支援)を行わない。

まとめ

フィリピン人特定技能者の退職・帰国は、「日本側=届出」「フィリピン側=費用と精算」の二本立てで捉えると、抜けが減ります。退職日を起点に14日以内の届出を確実に行い、帰国か転職かで分岐を判断し、帰国費用は自社の雇用契約(ANNEX-B)の条項に照らして決める——この順序が、円満な区切りと次の受入れの信頼につながります。

制度の全体像はMWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)とはを、監理団体を介する技能実習・育成就労での違いは技能実習・育成就労のMWO手続きをあわせてご覧ください。

本記事は情報提供を目的とした一般的な整理であり、個別の手続きの可否や必要書類・様式を保証するものではありません。制度・運用は変更されることがあります。実際の手続きにあたっては、出入国在留管理庁、移住労働者省(DMW)、各MWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)など、各機関の最新情報を必ずご確認ください。

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