工業製品製造業分野でフィリピン人材の受入れを進める場合、押さえるべき手続きが他分野より一つ多くなります。JAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)への賛助会員入会です。
工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れようとする国内事業者は、JAIMへの賛助会員入会が必須とされています。従来の協議会に代わる分野別の枠組みで、ここを通っていなければ受入れそのものが成立しません。
問題は、これがフィリピン側の手続きとは無関係に、日本側だけで完結する審査であることです。無関係であるがゆえに、スケジュールから抜け落ちます。この記事では、JAIM入会・在留資格手続き・フィリピン側手続きという三つの層を、どの順序で動かすのかを整理します。
結論:JAIM入会を最初に着手する
三つのうち、JAIM入会だけは相手を必要としません。
MWO申請には送出機関との提携が前提になります。在留資格の申請には候補者が確定していなければ着手できません。これに対してJAIM入会は、自社の事業所情報と製造品の情報だけで、今日から進められます。
そして後述するとおり、JAIM入会の審査は所要期間が読みにくい手続きです。読めない上に、他の手続きの完了を待つ必要がない。であれば、採用活動を始める前に済ませておくのが合理的です。
相手を待たずに進められる手続きから片づける。これが三層構造での基本方針です。
JAIMとは何を担う機関か
JAIMは、工業製品製造業分野における特定技能外国人および育成就労外国人の受入れを担う分野別の機関です。
押さえておきたい時期の区切りがあります。育成就労外国人の受入れに係る手続は、2026年8月3日(月)より開始予定とされており、入会手続のマニュアルも「8月2日まで」と「8月3日以降」で分かれています。この前後で申請する場合は、参照するマニュアルを間違えないよう注意してください。
※ 育成就労外国人の受入れに係る手続は、2026年8月3日(月)より開始されました。
年会費については、中小企業割引や正会員団体に所属する場合の団体割引が設けられています。なお、従来の協議会の構成員であったことによる割引はありません。協議会はJAIMの正会員ではないと明示されています。
【要確認】会費額・割引条件
三つの層をどう並べるか
第一層は他の二つと依存関係がありません。第二層と第三層の関係については、日本側とフィリピン側、どちらを先に動かすかで整理しています。
JAIM入会の所要期間が読みにくい理由
ここが実務上の要点です。入会は書式を出せば通るというものではありません。
該当性が事業所単位で判断されます。工業製品製造業分野に該当するかどうかは、日本標準産業分類に基づいて確認する必要があり、対象となる製造品は直近1年間に製造品出荷額等が発生している必要があります。そしてこの確認は事業所ごとに行われます。複数の工場を持つ場合、それぞれについて申請が必要です。
産業分類の判断は、想像以上に細かく分かれます。同じ金属加工でも、自社で製造した製品への塗装か、他社から受け入れた製品への塗装かで分類が変わります。修理のための作業は修理業として対象外になります。建設現場での溶接も対象外です。自社がどれに当たるかを事前に確認しておかないと、審査の過程で確認が入り、時間を要します。
差し戻しの仕組みがあります。申請内容に不備があると修正依頼のメールが届き、マイページから再申請することになります。このとき、メールに記載されている項目以外を修正すると再確認に時間がかかり、審査期間が長くなる可能性があると案内されています。指摘された箇所だけを直すのが鉄則です。
そして重要な点として、審査は二段階です。産業分類の該否はJAIMの入会審査時に確認されますが、最終的に外国人が在留資格を得られるかどうかは、地方出入国在留管理局への申請手続時に判断されます。JAIMを通ったことは、在留資格が下りることを意味しません。
なぜ先に済ませるのか──止まる場所が日本側になるから
三層のうち、期限が動き出すのは日本側の在留資格認定証明書が交付された後です。認定証明書の有効期間は交付日から3か月、そしてOEC(海外雇用許可証)は発給日から60日です。OECの発行には有効期限内の認定証明書が必要とされているため、この二つには前後関係があり、OECが先に出ることはありません。
ここでJAIM入会が完了していなかった場合を考えてください。入管への申請そのものに着手できません。フィリピン側の手続きが終わり、候補者も決まっているのに、日本側の分野別要件だけが理由で全体が止まります。JAIM側で差し戻しが一往復すれば、入社予定日はそのまま後ろにずれます。
しかも、この待ち時間は本人に説明しづらい種類のものです。フィリピン側では手続きが完了しており、本人からは何が起きているのか見えません。採用の内定から入国までの期間が延びることは、辞退や信頼の低下に直結します。
逆に、JAIM入会を先に完了させておけば、候補者が決まった時点で入管への申請に即座に着手できます。認定証明書が交付されてからは3か月の枠の中でフィリピン側の残りを収めることになるため、その前の段階で日本側の前提を片づけておく、というのが実務上の狙いです。
よくある間違い
会社単位で入会したと考えている
該当性の確認は事業所ごとです。新たな工場で受け入れる場合は、その事業所について申請が必要です。
新しい製造ラインへの従事を、届出なしで始めてしまう
既に入会が認められている製造品と似ていても、新たな製造品のラインに従事させる場合は申請が必要とされています。製造品が対象に該当するかを判断するのはJAIMです。
派遣や出向で受け入れようとする
工業製品製造業分野では派遣契約は認められておらず、雇用形態は原則として直接雇用に限られ、在籍型の出向も不可とされています。請負での受入れは条件を満たせば可能ですが、請負事業所判断チェックシートと請負契約書の写しの提出が必須です。
出張先の事業所を確認していない
出張先の事業所についても、JAIM賛助会員であり、当該業務に従事できることが必要とされています。
フィリピン側の手続きが分野で変わると思っている
JAIMは日本側の分野別要件です。MWO申請やOECの手続きが、製造業だからといって変わるわけではありません。変わるのは、日本側で完了させておくべき前提が一つ増えるという点です。
まとめ
工業製品製造業分野の受入れは、JAIM入会・日本側の在留資格・フィリピン側の手続きという三層構造になります。このうちJAIM入会だけが、相手を待たずに自社だけで進められる手続きです。
そして、期限が動き始めるのは日本側の認定証明書が交付されてからです。その前の段階で止まる要因を残さないことが、日程管理の要点になります。採用を始めてからJAIMの存在に気づく、という順序だけは避けてください。
分野別の受入れ要件については、建設分野の記事、介護分野の記事でもそれぞれ整理しています。フィリピン側の手続き全体はMWOとは何かをご確認ください。
本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の手続きの結果を保証するものではありません。制度の運用および要件は変更されることがあります。実際の手続きにあたっては、JAIM、経済産業省、出入国在留管理庁など各機関の最新情報をご確認ください。
主な参照先:一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)公式サイト/製造業における特定技能外国人材受入れに関するFAQ(令和8年7月1日時点版)/入会手続に関するよくある御質問(2026年5月)

