特定技能|建設分野の受入れ
建設分野は、特定技能の中でも人手不足が最も深刻な領域のひとつです。フィリピン人材は体力・現場適応力への評価が高く、採用を検討する建設会社は年々増えています。
ところが建設は、特定技能の全分野の中で、日本側の手続きが最も重い分野です。JAC(建設技能人材機構)への加入、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録、国土交通省による受入計画の認定——他分野にはない工程が連なります。そしてフィリピン人を採用する場合、ここにフィリピン政府側のMWO手続きがさらに加わります。
「どの手続きから着手すべきか」「全部でどれくらいかかるのか」——この記事では、日本側とフィリピン側の二本のレールを、どう並行させて段取りするかを整理します。
結論:日本側レールが長い建設こそ、MWOとの「並行設計」が生命線
- 日本側:建設固有の要件として、①建設業許可(建設業法第3条)、②CCUS登録(企業・本人とも)、③JAC加入、④国土交通省による建設特定技能受入計画の認定——の4段が必要です。特に④の認定審査には相応の期間がかかります。
- フィリピン側:MWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)への申請〜認証〜DMW登録〜OEC取得というフルコースが必要で、3か月〜半年程度を見込みます。ここは他分野と同じです。
- 両方を直列でこなすと、1年近くかかりかねません。実務の鍵は、日本側の受入計画準備とフィリピン側のMWO申請を並行で走らせる段取りです。
- さらに建設固有の論点として、月給制必須の要件がフィリピン側の賃金書類(ANNEX-B・Salary Breakdown)の作り方に直結します。
建設のフィリピン人採用は「日本側が重い分野」×「フィリピン側の手続きがある国籍」の掛け算です。直列で並べず、並行で設計してください。
日本側:建設固有の4段の手続き
国籍を問わず共通の、建設分野固有の要件です。詳細は国交省・JACの最新情報に譲り、段取りに効く点だけ押さえます。
- 建設業許可(建設業法第3条):受入れの前提です。
- CCUS(建設キャリアアップシステム)登録:企業と本人の双方の登録が、受入計画認定の要件になっています。
- JAC加入:正会員団体の会員になるか、賛助会員(年会費24万円)として加入します。他分野の「協議会」に相当する役割をJACが担います。要確認
- 建設特定技能受入計画の認定:外国人就労管理システムからオンライン申請し、国交省の地方整備局等が審査します。同等報酬・月給制・昇給、重要事項の母国語での事前説明、受入れ後講習、FITSによる巡回指導の受入れなどが認定要件に含まれます。
このうち④の認定は、在留資格の申請前に必要です。つまり日本側だけでも、JAC加入→CCUS登録→受入計画認定→在留資格申請という多段構造になっています。
フィリピン側:MWO手続きは他分野と同じフルコース
フィリピン人を雇う場合、日本側の手続きとは別に、送出機関(PRA)との提携→MWO申請(雇用契約の認証・書類の公証を含む)→DMW登録→本人のOEC(海外雇用許可証)取得、という流れが必要です。全体像はMWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)とはで解説しています。
ここは介護など他分野と同じ構造ですが、建設だからこそ効いてくる論点が3つあります。
- 月給制必須が、フィリピン側の賃金書類に直結する。建設分野の受入計画認定では、月給制による安定的な賃金支払いが要件です。日給月給の慣行が残る建設業界では、ここで賃金体系の組み直しが必要になる会社が少なくありません。この月給ベースの条件は、そのままフィリピン側の雇用条件書(ANNEX-B)とSalary Breakdownにも展開します。日本側の受入計画とフィリピン側の賃金書類で、基本給・手当・控除の説明が食い違うと、どちらかで補正になります。整合のとり方はMWO申請の賃金書類の作り方をご覧ください。
- 就労場所の書き方に注意する。建設は現場が移り変わる働き方ですが、フィリピン側の雇用条件書には就労場所を記載します。実務では主たる事業所等を基準に整理しますが、記載方法は管轄MWOの運用を確認してください。要確認
- コストが「二重」になることを最初から見積もる。建設では、JACへの受入負担金(人材ルートにより月額が異なります)が発生します。フィリピン人採用ではこれに加えて、送出機関への送出管理費が毎月かかります。1人あたりの月次コストが二重に発生する構造です。この2つは支払先も根拠も別物なので、受入れ管理表のような形で人ごとに紐づけて管理することをおすすめします。
モデルスケジュール:二本のレールを並行させる
直列ではなく並行で組むと、次のようになります。
- 着手期(〜1か月):建設業許可の確認、CCUS登録、JAC加入の手続き開始 + 並行して送出機関の選定・提携
- 書類作成期(1〜2か月):受入計画の作成 + 並行してMWO申請書類の作成・公証(賃金条件は月給制で両者を統一)
- 審査期(2〜4か月):受入計画の認定審査 + 並行してMWO審査〜DMW登録
- 在留資格申請(1〜3か月):受入計画の認定を得て、在留資格認定証明書(COE)を申請
- 出国前手続き(2週間〜1か月):査証・OEC取得・本人側の出国前手続き
- 入国・就労開始:受入れ後講習の受講も忘れずに
並行設計なら全体で7か月〜1年程度が現実的な見立てです。逆に、受入計画の認定が下りてからMWOに着手する直列型では、そこからさらに3〜6か月延びます。要確認所要期間は時期・案件により変動します。
よくある間違い
- 日本側の手続きが終わってからMWOに着手する。建設は日本側が長いぶん、直列にすると全体が1年を超えかねません。並行が原則です。
- 受入計画は月給制で作ったのに、フィリピン側の賃金書類が別の組み方になっている。両者は同じ賃金条件の別表現です。
- JAC受入負担金と送出管理費を混同する、または片方しか予算化していない。支払先も根拠も別の、二重のコストです。
- CCUS登録を後回しにする。受入計画認定の要件のため、ここが遅れると認定申請自体ができません。
- 「介護と同じ段取りでいける」と考える。フィリピン側は同じでも、日本側の構造が大きく異なります。分野が違えば段取りも変わります(介護はこちら)。
まとめ
フィリピン人を特定技能「建設」で受け入れる段取りは、「日本側のレール(許可→CCUS→JAC→受入計画認定)」と「フィリピン側のレール(MWO申請〜OEC)」を、最初から並行で設計することに尽きます。
建設は日本側の手続きが最も重い分野だからこそ、フィリピン側の3〜6か月を「待ち時間の裏」に隠せるかどうかで、入国時期が数か月変わります。月給制の賃金設計を両国の書類で統一し、二重の月次コストを最初から見積もる——この2点を押さえれば、建設のフィリピン人採用は計画どおりに進めやすくなります。
受入れ手続き全体のどこに何があるかは、MWO手続き完全ガイドから確認できます。
本記事は情報提供を目的とした一般的な整理であり、個別の手続きの可否や要件充足を保証するものではありません。JAC・CCUS・受入計画認定など日本側の制度は国土交通省・JAC・出入国在留管理庁の最新情報を、フィリピン側の手続きは管轄のMWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)・DMW(移住労働者省)の最新情報を必ずご確認ください。

