育成就労制度の施行は2027年4月1日です。まだ先の話に見えますが、準備の手続きはすでに始まっています。
そして、フィリピン人材の受入れを検討している監理団体・企業には、他の送出国とは異なる事情があります。2026年7月時点で、フィリピンとの二国間取決め(MOC)はまだ作成されていません。
この記事は、監理団体・監理支援機関の実務担当者と受入れ企業の担当者に向けて、現時点で何が確定していて、何が確定していないのかを整理するものです。
本記事の情報は2026年7月28日時点のものです。この分野は現在進行形で動いているため、実際の判断にあたっては必ず最新情報をご確認ください。
結論:フィリピンは「暫定」の段階。契約先が認定されるとは限らない
先に、実務上いちばん重要な点を述べます。
育成就労では、原則として二国間取決め(MOC)を作成した国からのみ受入れを行うこととされています。そして送出機関は、育成就労法施行規則の要件を満たす認定送出機関である必要があります。
この認定送出機関のリストは、MOCが作成された後に、相手国から提出されます。
MOCの協議中である国については、認定送出機関となることが見込まれる機関の暫定送出機関リストが提出されます。フィリピンは、現在この段階にあります。
そして、ここが実務上の要点です。暫定リストに載っていた機関が、正式な認定リストに載るとは限りません。
暫定リストは「見込み」であって、確定ではありません。この差が、監理支援機関の許可に直結します。
すでに動いている日程
まず、時間軸を整理します。
施行日前申請 受付開始
施行日前申請 受付開始
既存の監理団体が自動的に監理支援機関へ移行することはできません。新たに許可を取得する必要があり、その申請はすでに始まっています。
送出機関をめぐる枠組みが変わります
ここが、フィリピン人材の受入れに最も影響する部分です。
申請書に送出機関名を記載する必要があります
監理支援機関の許可に係る施行日前申請では、受入れを予定している国の送出機関と契約し、その機関名を申請書に記載する必要があります。
MOCの協議中である国については、暫定送出機関リストに記載されている機関を記載して申請するという運用になっています。
しかし、許可が下りるのは認定リストの提出後です
監理支援機関の許可は、二国間取決めを作成した国から正式に認定送出機関リストが提出された後になされます。つまり、申請してもその国のMOCが作成されるまでは許可が保留される構造です。
そして、認定されなかった場合の帰結が明記されています
外国人技能実習機構の案内には、次の趣旨が明記されています。
認定されなかった場合
暫定リストに載っていたものの認定リストには載らなかった送出機関と受入れ契約をしている場合、または二国間取決めが作成に至らなかった場合には、その送出機関が申請書に記載されたままの状態では、監理支援機関の許可ができないとされています。
これは、契約先の選定が許可の可否に直結するということです。
フィリピンの現状(2026年7月時点)
公表されている情報を整理すると、フィリピンの状況は次のとおりです。
送出機関リストは提出済みで、種別は「暫定」です。掲載・更新日は2026年7月13日とされています。
二国間取決めの作成日は、空欄のままです。つまり、まだ作成されていません。
一方、他の送出国では作成が進んでいる例もあります。フィリピンが遅れているというより、国ごとに進度が異なるというのが実態です。
最新の状況は、外国人技能実習機構の一覧ページで確認できます。リストの種別が「暫定」から「認定」に変われば、二国間取決めが作成されたということです。
【要確認】作成状況は随時更新されます。最新の状況は外国人技能実習機構の公表資料でご確認ください。
まだ示されていないこと
フィリピン側の手続きが育成就労でどうなるかは、現時点では公表された情報から読み取れません。
① MWO申請とDMW登録が、育成就労でどう扱われるか
特定技能や技能実習では、MWOへの申請とDMWへの登録が求められています。育成就労で同じ枠組みが適用されるのか、別の整理になるのかは示されていません。
② 現在の送出機関との関係
フィリピンの送出機関はDMWのライセンスを受けた機関ですが、育成就労の暫定リストに載っている機関が、現在提携している機関と同一とは限りません。送出機関の選定で述べたとおり、この選択は後から変更しにくいものです。
③ 技能実習から育成就労への移行時の扱い
経過措置により、施行日時点で技能実習を行っている人には一定の取扱いが設けられていますが、その際にフィリピン側で何が必要になるかは別の論点です。
④ 育成就労から特定技能への移行時の扱い
特定技能へ移行する際、フィリピン側で改めて登録が必要になるのかどうかも、現時点では確認できません。
これらが示されていない以上、断定的な記述には注意が必要です。「こうなるはずだ」という推測に基づいて準備を進めるより、確認できたことから順に進めるほうが安全です。
いま確認しておきたいこと
現時点で、監理団体・企業側が確認できることを整理します。
① 提携先が暫定リストに載っているか
外国人技能実習機構「外国政府認定送出機関一覧(育成就労制度)」で、現在の提携先または提携予定先の名称を確認してください。載っていなければ、施行日前申請の記載対象になりません。
② 名称の表記が一致しているか
リスト上の機関名と、契約書や申請書に記載する名称が一致しているかを確認します。表記のずれは、MWO申請でも繰り返し問題になる論点です。
③ 認定されなかった場合の想定をしているか
暫定リストは確定ではありません。提携先が認定されなかった場合にどうするかを、あらかじめ考えておく必要があります。
④ 送出機関側が育成就労をどう捉えているか
フィリピン側の送出機関が、育成就労での送出に向けてどのような準備をしているか。先方に確認しておくこと自体が、情報収集になります。
⑤ 二国間取決めの作成状況を定期的に見ているか
状況は随時更新されます。月に一度程度、公表資料を確認する習慣を持っておくことをおすすめします。
よくある間違い
既存の監理団体の許可がそのまま使えると考える
自動的な移行はできません。新たな許可申請が必要です。
暫定リストを確定したリストだと考える
「認定送出機関となることが見込まれる機関」のリストです。確定ではありません。
特定技能や技能実習の枠組みがそのまま育成就労でも適用されると考える
フィリピン側の手続きがどう整理されるかは、現時点では示されていません。
2027年4月から準備すればよいと考える
監理支援機関の申請はすでに始まっており、育成就労計画の申請も2026年9月から始まる予定です。
まとめ
育成就労でフィリピン人材を受け入れるための準備は、すでに始まっています。そして現時点では、フィリピンとの二国間取決めは作成されておらず、送出機関のリストは暫定の段階です。
確定していることは、送出機関の選定が監理支援機関の許可に直結するという点です。そして確定していないのは、フィリピン側の手続き——MWO申請やDMW登録が育成就労でどう扱われるか——という点です。
この段階でできるのは、確認できることを確認し、動きを追い続けることです。推測で準備を進めるより、確実です。
本記事は、公表情報に動きがあり次第、更新します。
フィリピンの制度の全体像はDMW(移住労働者省)とは何かを、送出機関の位置づけは送出機関とは何をする機関かを、日本側とフィリピン側の順序関係は日本側とフィリピン側、どちらを先に動かすかをあわせてご確認ください。
本記事は2026年7月28日時点で公表されている情報に基づく整理であり、個別の手続きの結果を保証するものではありません。育成就労制度に関する運用は現在も順次更新されています。実際の手続きにあたっては、出入国在留管理庁、外国人技能実習機構、MWO、DMWなど各機関の最新情報を必ずご確認ください。
