MWO申請の準備を始めた担当者が、意外と早い段階でつまずくのが「うちはどちらに申請するのか」という問題です。
本社は東京、でも実際に働いてもらう工場は愛知——この場合の申請先はMWO東京ではありません。さらに、申請先が決まったあとも「東京と大阪で必要書類が違う」という事実が待っています。本記事では、日本国内に2か所あるMWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)の管轄の決まり方と、東京・大阪の実務上の違いを整理します。
結論:申請先は「就業場所」で決まり、東京と大阪は”別の窓口”として扱う
押さえるべき原則は2つです。
第一に、申請先を決めるのは企業の本社所在地ではなく、労働者が実際に働く事業所の所在地です。本社が東京でも、就業場所が大阪管内なら申請先はMWO大阪です。複数の県に事業所があり、それぞれで受け入れる場合は、就業場所ごとに管轄を確認する必要があります。
第二に、MWO東京とMWO大阪は、必要書類・様式・運用が一部異なります。同じ制度の窓口だから書類も同じだろう、という前提で準備すると、提出段階でやり直しになります。実務上は「似ているが別の窓口」と捉えておくのが安全です。
管轄の決まり方:都道府県の割り振り
管轄は都道府県単位で分かれています。
MWO東京の管轄は、北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、山梨、静岡です。北海道・東北・関東に加えて、甲信越と静岡までが東京側と覚えると整理しやすいでしょう。
MWO大阪の管轄は、愛知、岐阜、三重、富山、石川、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄です。つまり愛知・北陸から西はすべて大阪です。
境界で迷いやすいのは中部地方です。静岡・長野・新潟・山梨は東京、愛知・岐阜・富山・石川・福井は大阪と、県境で割れています。「名古屋の会社だから、東京と大阪の近いほう」ではなく、就業場所の県がどちらのリストにあるかで機械的に決まります。
必要書類の違い:新規・更新では大阪が3つ多い
特定技能の申請書類は、大部分が東京・大阪共通です。申請書、企業プロフィール、雇用契約書・雇用条件書、求人票(Manpower Request)、給与内訳(Salary Scheme)、Recruitment Agreement、登記簿謄本といった中核書類は、どちらでも求められます。
違いが出るのは、大阪側で追加される書類です。MWO大阪では次の3点が必要になります。
共同誓約宣誓供述書(Joint Affidavit of Undertaking)。受入れ企業と送出機関が義務の履行を誓約する書類で、公証が必要です。実務上は、Recruitment Agreementとまとめて公証を取ることができます。
送出機関の同意の宣言(Declaration of Consent of SO)と受入れ機関の同意の宣言(同 AO)。SOはSending Organization(送出機関)、AOはAccepting Organization(受入れ機関)の略で、MWO大阪の必要書類リストではこの略号で書き分けられています。内容は個人情報保護法(RA 10173)に基づき、DMWのデータベースへの個人情報の提供・処理に同意することを示すものです。公証は不要で、会社名の記入と認定署名者の署名・押印で完結します。共同誓約宣誓供述書と混同して公証の段取りに入れてしまわないよう、区別しておきましょう。様式はMWO大阪の公式サイトからダウンロードできます。
なお、必要書類としては送出側・受入側の2種類が挙がっていますが、日本の受入れ企業が用意するのは自社分(AO)の1通です。送出機関分は送出機関側が作成します。「2種類あると聞いたが1通しか出していない」という状況は、この役割分担によるものです。
つまり、大阪で追加される3書類のうち公証が必要なのは共同誓約宣誓供述書だけです。
一方、MWO東京では、新規・更新の必要書類チェックリストにこれらの書類は含まれていません。
ただし、「東京では宣誓供述書が一切不要」と単純化するのは危険です。MWO東京でも、2社目以降の送出機関を登録するDual Accreditation(複数認定)の場合には、Affidavit of Undertakingが必要で、日本での公証が求められます。また、送出機関との提携を解除する場合(Revocation)にも、共同誓約宣誓供述書やSPAの撤回書などを公証したうえで提出することとされています。
つまり違いは「東京は書類が少なくて楽」ではなく、どの手続きで、どの書類が、どの形式で求められるかの設計が異なるということです。自社の申請がどのケースに当たるかを確認したうえで、提出先の最新チェックリストに沿って準備してください。
提出時の形式要件:東京の公式案内から
MWO東京は、提出書類の形式について公式サイトで具体的に案内しています。大阪でも共通する考え方が多いので、参考になります。
用紙はA4サイズ。書類はホチキス留めせず、クリップで留めます(綴じてしまうと差し戻しの原因になります)。記載事項はすべてタイプ入力で、修正跡があるものは不可。署名と印鑑は原本であることが必要で、電子署名は認められません。日本語の書類にはすべて英訳を添え、翻訳証明書を付けるか、翻訳した人の氏名・署名・印鑑を記載します。
また、MWO東京は審査の処理期間を10〜15営業日(土日祝を除く)と案内しています。これは書類が受理されてからの標準的な処理時間で、書類準備や差し戻し対応の期間は含まれません。なお、MWO東京は認証手続きに関して手数料を徴収しないことも明記されています。
なお、審査の実際の進み方や時期による変動については、本サイトで別途、定点的に情報を更新していく予定です。
様式の取得:公式サイトも別々
MWO東京とMWO大阪は、それぞれ別の公式サイトを運営しており、様式も別々に配布されています。使う様式は必ず提出先MWOのサイトから取得してください。過去に別管轄で使った様式の流用は、内容の過不足を生む原因になります。
MWO東京
- 公式サイト:https://mwo-tokyo.dmw.gov.ph/
- 特定技能(SSW)の必要書類ページ:SPECIFIED SKILLED WORKERS 1&2
- 様式ダウンロード(Googleドライブ): B. SPECIFIED SKILLED WORKERS (SSW) PROGRAM – Google ドライブ
MWO大阪
- 公式サイト:https://mwo-osaka.dmw.gov.ph/
- 様式ダウンロード一覧:Downloadable Forms – MWO-OSAKA
細かな違いですが、実務では地味に効く点として、MWO東京の様式はWord形式でダウンロードできるのに対し、MWO大阪はPDF形式が中心です(大阪の様式には日本語訳が付いているものがあるという利点もあります)。Word形式は入力・修正がしやすいため東京管内の企業には朗報ですが、だからといって東京のWord様式を大阪への申請に流用するのは避けてください。
なお、同意の宣言については、DMWが全在外事務所に対して標準様式へ組み込むよう指示した経緯があります。現時点で東京・大阪の必要書類に差がある論点ですが、今後は東京側でも求められるようになる可能性があります。申請前に、提出先サイトの最新の必要書類リストを確認してください。
よくある間違い
本社所在地で申請先を決めてしまう
最も多い勘違いです。管轄は就業場所基準。本社と就業場所の県が違う場合、登記上の住所に引っ張られないよう注意してください。
別の管轄の様式で申請してしまう
様式は提出先のものを使います。過去案件の使い回しで、前回と管轄が違うのに同じ様式一式で準備してしまうケースが実務では起こりがちです。
大阪のみの3書類を見落とす
東京での申請経験がある企業・支援機関が大阪管内の案件を扱うとき、共同誓約宣誓供述書と同意の宣言の存在に気づかず、公証の段取りからやり直しになることがあります。大阪案件では公証対象書類が増える、と覚えておいてください。
「東京は書類が少ない」と思い込む
新規・更新では確かに大阪のほうが提出書類が多いですが、東京でもDual Accreditation(2社目の送出機関の登録)や提携解除の場面では、公証済みの宣誓供述書が必要になります。管轄ではなく「どの手続きか」で必要書類が変わる、と捉えてください。
どちらにも共通する形式要件を軽視する
協定書・雇用契約書の全ページへの代表者自筆署名+会社印、英語名称の全書類統一、日本語書類への英訳添付、パスポートは写真ページのみ、登記簿謄本は3か月以内、そしてホチキス留めをしないこと——これらは管轄を問わず押さえるべき基本です。管轄の違いに気を取られて、共通の基本を落とさないようにしましょう。
まとめ
- 申請先は本社所在地ではなく「就業場所」の都道府県で決まる
- 東京は北海道〜静岡・甲信越まで、大阪は愛知・北陸以西のすべて
- 新規・更新では、大阪で共同誓約宣誓供述書と同意の宣言が追加(公証が必要なのは共同誓約宣誓供述書のみ。同意の宣言は企業が用意するのは自社分1通)
- 東京でもDual Accreditationや提携解除では公証済みの宣誓供述書が必要
- 様式は東京・大阪で別々に配布。必ず提出先の公式サイトから取得し、流用しない
- 提出は A4・ホチキス留め不可・タイプ入力・原本署名/押印(電子署名不可)が基本
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本記事は情報提供を目的としています。管轄・必要書類・様式は変更されることがあるため、実際の申請にあたっては管轄のMWOの最新情報をご確認ください。

