フィリピン人材の受入れが数名から十数名に増えてくると、管理が急に難しくなります。「在留期限はカレンダーに入れているが、それ以外に何を管理すべきか分からない」「気づいたら会社側の認証期限が近づいていた」「退職者の送出管理費を止め忘れた」——受入れ企業の人事・総務のご担当者から、こうした声が繰り返し寄せられます。
管理が破綻する原因は、多くの場合ひとつです。個人の在留期限だけを見ていることです。
この記事では、フィリピン人材の受入れで管理すべき項目を整理し、そのまま使えるExcelの管理表テンプレートを配布します。ダウンロードは無料で、登録も不要です。
結論:期限管理は「企業単位」と「個人単位」の2階建てで持つ
- 個人単位の期限:在留期限、特定技能1号の通算年数、OEC(海外雇用許可証)の有効期限など。人が増えるほど数が増えます。
- 企業単位の期限:Company Accreditation(企業認証)、Job Order(求人票)の有効期限と人数枠、募集契約など。人数に関係なく、会社にひとつだけ存在します。
- 見落とされるのは、ほぼ常に後者です。企業単位の期限が切れると、個人の在留手続きが順調でも、次の採用そのものが止まります。
- さらにフィリピン特有の論点として、送出機関と管理費を人ごとに紐づけて持つ必要があります。ここが抜けると、退職時の管理費停止や返金の精算を取り逃します。
在留期限は「人」についてくる期限、Accreditationは「会社」についてくる期限。同じ表で並べて管理します。
管理表テンプレートのダウンロード
この記事で解説する内容を、そのまま入力できるExcelファイルにしました。受入れ企業向けの構成です。
フィリピン人材 受入れ管理表テンプレート(Excel)
企業情報と年間チェック/個人別管理台帳/送出機関・管理費一覧の3シート構成
シートは3つです。
- 01_企業情報と年間チェック:会社情報、企業単位の期限、受入れ枠の消化状況、年1回見直す項目
- 02_個人別管理台帳:在留期限、OEC、送出機関、管理費、賃金改定などを1人1行で管理
- 03_送出機関・管理費一覧:送出機関ごとの在籍人数と管理費を自動集計
うすい黄色のセルが入力欄、うすい灰色のセルが自動計算欄です。残日数や更新アラートは、ファイルを開いた日を基準に自動で計算されます。記入例が1行入っているので、削除してお使いください。
管理項目1:企業単位(人数に関係なく発生する期限)
会社にひとつだけ存在する期限です。担当者が代わると引き継ぎから漏れやすく、期限が近づいても誰も気づかない状態になりがちです。
- Company Accreditation(企業認証)の有効期限:最長5年です。切れると、次の受入れ手続きが進みません。
- Job Order(求人票)の有効期限と人数枠:認証を受けた人数枠を超える採用はできません。「あと何人採用できるか」を常に把握しておくと、採用計画が立てやすくなります。
- 募集契約(Recruitment Agreement):送出機関ごとに締結しています。
テンプレートでは、認証を受けた人数枠から現在の在籍人数を差し引いて、残枠が自動で表示されます。在籍人数は個人別台帳と連動しており、退職日を入力すると自動的に集計から外れます。
管理項目2:個人単位(1人1行で持つ)
人ごとに管理する項目です。テンプレートでは、次を1行にまとめています。
- 在留期限と残日数:残り180日で「注意」、90日で「要更新準備」、超過で「期限切れ」と自動表示されます。
- 特定技能1号の通算経過月数:1号には通算の上限があるため、自社での勤務開始日ではなく、前職を含む通算の開始日で管理します。ここを自社基準で数えると、実際より短く見積もってしまいます。
- OEC(海外雇用許可証)の発給日と有効期限:発給日から60日として自動計算されます。要確認
- 一時帰国の予定:帰国と再入国の予定を把握しておくと、必要な手続きの準備が間に合います。
- 直近の賃金改定日と、認証済み契約との差異:後述する年1回の点検で使う欄です。
管理項目3:送出機関と管理費(フィリピン特有の論点)
日本国内だけの外国人雇用管理表には、まず存在しない項目です。
送出機関との契約は、労働者本人ではなく企業との間で結ばれています。そして多くの場合、在籍している人数に応じて毎月の管理費が発生します。ここで問題になるのが退職時です。
退職・帰国したのに管理費を止め忘れると、費用が発生し続けます。また、早期離職の場合は募集契約書の定めにより初期費用の一部が返金されることがありますが、退職の事実を送出機関へ連絡しないまま時間が経つと、精算のタイミングを逃します。
そこでテンプレートでは、人ごとに送出機関と月額管理費を持たせ、退職日を入力すると集計から自動的に外れる構造にしました。送出機関ごとの在籍人数・月額合計・年額の目安が一覧で確認できます。「今月から誰の分が減るのか」が目に見えるため、停止の連絡漏れに気づきやすくなります。
退職時の具体的な流れは、フィリピン人従業員が退職・帰国するときの手続きで整理しています。
年1回、必ず見直す項目
毎月の期限確認とは別に、年1回まとめて点検すると効率的です。最低賃金の改定時期に合わせると、忘れずに実施できます。テンプレートの「年間チェック」には、次を組み込みました。
- 最低賃金の改定を賃金に反映したか
- 認証済み契約と現在の条件に差はないか(賃金・勤務地・職種・勤務時間の4点)
- 会社情報(社名・所在地・代表者)に変更はないか
- Job Orderの残枠は足りているか
- 送出機関との契約内容に変更はないか
- 在留期限が6か月以内の方はいないか
- 届出の提出漏れはないか
このうち1と2は、特に重要です。最低賃金は毎年のように改定されるため、企業が積極的に何かを変えなくても、認証時の給与条件と実際の賃金は自動的にズレていきます。このズレは次の申請で表面化します。詳しくは雇用条件を変更するときの手続きを、会社情報の変更については会社の情報が変わったときのMWO手続きをご覧ください。
よくある間違い
- 在留期限だけをカレンダー管理し、企業単位の期限を持っていない。
- 特定技能1号の通算年数を、自社の勤務開始日から数えている。前職を含む通算で管理する必要があります。
- 退職者の管理費を止め忘れる。人数と費用が連動していない表では気づけません。
- 送出機関名の表記がゆれている(全角半角・スペースの違い)。集計が合わなくなります。
- 管理表を作ったが、更新する日を決めていない。月1回の確認日を決めるだけで、精度が大きく変わります。
まとめ
フィリピン人材の受入れ管理は、「企業単位の期限」「個人単位の期限」「送出機関と管理費」の3つを、ひとつの表で持つのが基本です。
特に企業単位の期限は、担当者が気づかないうちに近づき、次の採用を止めます。月1回は残日数を眺め、年1回は最低賃金の改定に合わせて条件のズレを点検する——この2つの習慣があれば、多くのトラブルは事前に防げます。制度の全体像はMWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)とはをあわせてご覧ください。
本テンプレートおよび本記事は情報提供を目的とした一般的な整理であり、個別の手続きの可否や必要書類・様式を保証するものではありません。必要な管理項目は受入れ形態により異なります。制度・運用は変更されることがあります。実際の手続きにあたっては、出入国在留管理庁、移住労働者省(DMW)、各MWO(駐日フィリピン移住労働者事務所)など、各機関の最新情報を必ずご確認ください。

